母は、最近食欲がなく、ぐったりしていた。
自分で着替えることも難しくなり、
朝晩、私が着替えさせることが多くなっていた。
――これも、血尿のせいなのかもしれない。
病院を受診させると決めた夜、
私は不安でいっぱいだった。
#7119に電話をし、症状を伝え、
緊急性があるかを尋ねた。
「ご本人の意識がはっきりしていて、
強い痛みがなければ、翌日の受診で大丈夫です」
そう言われた。
「仕事があるのになぁ……」
一瞬、そんな思いが脳裏をよぎる。
でも、もし連れて行くのが遅れていたら、
そのほうが、よっぽど後悔する。
仕事を休む連絡を入れ、
朝一番で近所の泌尿器科へ向かった。
母は、もう歩くのも精いっぱいで、
できるだけ歩かせないように車で連れて行った。
けれど、病院の駐車場は満車。
近くのコインパーキングに停め、
なんとか事なきを得た。
母は、
今からどこへ行くのかもわからないまま、
言われるがまま、私の後をついてくる。
尿検査のために、コップを渡される。
「出ない」
その一点張りだった。
水を飲ませようとすると、嫌がる。
尿を取らなければ診察は始まらない。
ただ、時間だけが過ぎていった。
結局、尿が取れないまま、順番が回ってきた。
ひとまず、エコーで膀胱の様子を見ることになった。
「……はっきり、影がありますね」
先生はそう言った。
「その影のせいで、
片方の腎臓から尿が出ていません」
そして、
先生は「腫瘍」という言葉を使った。
「これは、大きな病院での再検査が必要です。
仮に腫瘍を取るとしても、
年齢的に外科的治療は厳しいかもしれません」
「手術をするより、
何もしないほうが、長生きする場合もありますよ」
頭の中が、真っ白になった。
……どういうこと?
母が、いなくなるの?
今まで一番恐れていたことが、
現実になってしまった気がした。
その後、尿検査もなんとか終わり、
膀胱炎もあるとのことで、
抗生物質と止血剤を6日分処方された。
「金曜日に、もう一度来てください」
そう言われた。
その日は、
ちょうど御用納めの日だった。


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