「在宅医療って、何?」
そう思って調べてみると、
病院へ行くことが困難な人に対して、
医師が自宅へ出向き、診察をしてくれる医療サービスだという。
24時間365日、
何か異変が起こったときには、
連絡すれば診療に来てくれる体制がある。
母と私、二人だけの世帯にとって、
これほど心強いサービスはないと思った。
ただ、
「在宅医療って、高いんじゃない?」
という不安もあった。
調べてみると、
自己負担が1割の場合、
月2回の診療でおよそ8,000円くらい。
決して安くはない。
でも、
24時間体制で、
何かあれば駆けつけてくれるという安心感を思うと、
その金額は、
“保険”のようなものだと感じた。
ふうふう言いながら、
病院まで行く母の姿を思い浮かべると、
このくらいのことは、してもいい。
むしろ、
してあげたいと思った。
母が具合を悪くしてからの私は、
ずっと不安でいっぱいだった。
今さらながら、
「なるべく多くのところとつながろう」と、
必死になって動いていた。
これまで、叔父叔母のことは
私が率先して面倒を見てきた。
でも、母の一件で、
私はついに白旗を上げた。
時々手伝ってくれていた、
母の年の離れた弟
(叔母にとっても弟になる人。ここでは叔父と呼ぶ)
事情を話すと、
「後のことは任せろ。母さんのことに集中しろ」
そう言ってくれた。
本当に、助かった。
「改めてだけど……
母には、かかりつけ医がいないんだよね」
そう相談すると、
叔父叔母のかかりつけ医が
在宅診療をしているクリニックだと教えてくれた。
叔父が母の事情を先に話してくれていたようで、
相談員に連絡するようにと、
LINEで名刺の写真が送られてきた。
正直、区をまたいでいて、
近所のクリニックではなかった。
それでも、
診療範囲内ということで、
受診可能とのことだった。
事情を説明し、
まずは大きな病院での検査を終えてから、
在宅医療を開始する、という流れに決まった。
母の大きな病院での検査は、1月7日。
在宅医療の初回診療は、1月12日。
一週間の薬の投与で、
母の血尿はいったん収まり、
なんとか、穏やかな年越しを迎えることができそう
病院が閉まっている間、
何事も起こりませんように――
ただ、それを祈るばかりだった。
私は、朝晩、
母のリハビリパンツを替えていた。
大晦日のこと。
リハビリパンツの
尿パッドの部分が、ないことに気づいた。
「あれ? どうしたんだろう」
母に聞いても、
「知らない」と言う。
お風呂に入れている間に、
ゴミ箱をのぞくと、
その尿パッドが捨ててあった。
そして、
そこには、血尿がついていた。
母は――
病院に行きたくなかったのか、
それとも、私を心配させたくなかったのか。
また血尿が出たことを、
黙って隠していたのだ。
明日は、元旦。
頭の中が、真っ白になった。
……どこも、病院は開いていない。


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