土曜日。
仕事があって、病院には行けなかった。
行けなかった理由は分かっている。
仕事だったし、どうにもならなかった。
それでも、
「今日も行けなかった」という事実だけが、
一日じゅう、私の中に残っていた。
仕事をしている間も、
頭のどこかでずっと母のことを考えていた。
今どうしているだろうか。
ちゃんと眠れているだろうか。
何か、少しでも口にできているだろうか。
この日は、普段あまり会わない課の人たちと話す機会があった。
話題は、ごく普通の生活のことだった。
日々の忙しさや、休日の過ごし方、
当たり前に続いている日常の話。
その輪の中にいながら、
私は少しだけ、そこから離れた場所にいる感覚があった。
話を聞きながら、相槌を打ちながら、
心のどこかで思っていた。
私は今、こういう普通の生活の話ができない場所にいる。
母の体調、入院、食べられない現実。
戻ってきたとしても、
前と同じような暮らしにはならないかもしれないという思い。
それらが頭から離れず、
日常の話題が、自分の足元から少し浮いて見えた。
叔父もまた、老衰で意識がなく、点滴だけで生きている。
二人とも、回復を目指す時間の中にはいない。
その現実を、私は一人で抱えている。
怖くて泣き叫びたいわけじゃない。
でも、平気なふりをできるほど軽くもない。
先が見えず、見当もつかないまま、
それでも日常は続き、私は仕事をし、人と話し、笑顔を作る。
今の私は、
行き先の分からない綱渡りをしている。
下を見れば、落ちてしまいそうで、
前を見ても、ゴールは見えない。
それでも、歩みを止めることはできない。
この日は、
そんな自分がどこに立っているのかを、
はっきりと自覚した一日だった。

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