介護日記10 在宅診療開始

介護日記
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在宅診療を開始することになった。
まずは認知症の検査。
正直、覚悟はしていたけれど、実際には思っていた以上に進んでいた。
90代なのだから仕方ない、と頭ではわかっている。

それでも、在宅診療で歯科のケアまでしてもらえると知ったときは、正直ほっとした。
母にとって、予約の時間に合わせて外出することは、もう無理だ。
食欲が落ちたのも、歯を抜いてから入れ歯が合わなくなったのがきっかけだった。

介護度はどんどん進んでいく。
私は地域包括支援センターに連絡し、再度、介護認定をお願いした。

認定前だけど、おそらく今の状況は介護認定がつくだろうとのことで、先回りをしてくれ
ケアマネさんとの初めての顔合わせ。
優しそうな方で、これまで張りつめていたものが一気にほどけて、思わず涙がこぼれてしまった。

在宅診療の医師は、
「今の状態なら、介護Ⅰくらいはいくでしょう」
そう言ってくれた。

初回の歯科検診には、私も付き添った。
診てもらうと、歯の状態は思っていた以上に悪く、グラグラしている歯が二本あった。

当然、その場で抜いてくれるものだと思っていた。
ところが若い歯科医は、
「手術後に抜きましょう」
と言う。

……は?
このまま二週間以上、食べにくい状態で放置するの?

胸がぎゅっと苦しくなった。
でも翌日、その歯科医から連絡が入った。
クリニックの院長が「早く抜くべきだ」と判断したらしい。
そして、次の日には診療が入った。

ほら、やっぱり。
こうやって、話し合い(カンファレンス)を重ねながら、
母のケアは進んでいく。

結局、2本の歯は抜歯してもらえた。
判断は早く、処置も的確だったと思う。
あのまま放置されていたら、もっと辛い時間が続いていたはずだ。

ただ――
残念ながら、それがそのまま食欲の回復にはつながらなかった。

歯を抜けば食べられるようになる、
入れ歯を調整すれば元に戻る、
どこかでそんな「わかりやすい改善」を期待していたのだと思う。

でも現実は違った。
食べるという行為そのものが、母にとって大きな負担になっていた。
噛む力、飲み込む力、食事に向かう気力。
どれか一つではなく、全部が少しずつ弱っていた。

それでも、在宅診療と歯科が連携してくれたことは、大きかった。
「様子を見ましょう」ではなく、
「今できる最善」を話し合ってくれた。
その過程で、私は一人じゃないと思えた。

介護は、何かを“良くする”ためだけのものじゃない。
これ以上つらくならないようにすること、
安心して過ごせる時間を守ること。
その意味を、少しずつ受け入れるようになってきた。

食欲は戻らなかったけれど、
痛みや違和感は減った。
それだけでも、やってよかったと思っている。

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