ようやくMRI検査を受けられたのは、午後3時過ぎだった。
そこから、また泌尿器科へ戻る。
診察室で、撮影された画像を見ながら、
先生と今後の治療について話をする。
膀胱鏡の写真を見たとき、
「がんの形状とは違うかもしれない」
そんな淡い希望を、正直どこかで抱いていた。
でも、その期待はあっさりと打ち消された。
やはり、がんだった。
ただし、救いだったのは、
胃や子宮など、他の臓器への転移は確認されていない、ということ。
とはいえ、血尿が続いている以上、
このまま様子を見るという選択肢はない。
「出血を止めるためにも、手術をしたほうがいいでしょう」
先生は静かな口調で、そう説明した。
高齢であること、
全身麻酔のリスク、
完治を目指す手術ではないこと。
一つひとつ、現実的な説明が続く。
腫瘍をすべて取り切ることは難しい。
でも、出血の原因になっている部分を削ることで、
血尿を抑え、少しでも穏やかに過ごせる可能性がある。
いわゆる「治すための手術」ではなく、
「苦痛を減らすための手術」だった。
母は、横でぼんやりと話を聞いている。
どこまで理解しているのかは、正直わからない。
私は、先生の話を必死にメモしながら、
頭の中で何度も同じ言葉を繰り返していた。
――苦しまないで済むなら。
――少しでも、血尿が止まるなら。
それだけでいい。
手術は、早ければ翌週にも可能だという。
一度持ち帰って家族で相談する、という選択肢もあったが、
ここまで来て、先延ばしにする理由は見当たらなかった。
「お願いします」
気づいたら、そう答えていた。
診察室を出た頃には、外はもう薄暗くなっていた。
朝から病院にいて、
長い待ち時間と検査に振り回され、
心も体もすっかり消耗していた。
それでも、
「次に進む道が決まった」
それだけは、はっきりしていた。

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