介護日記38 「ありがとう」を伝えてくれる手

介護日記
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4月21日

朝方、母が急に起き上がろうとする。
動きを検知するてんとう虫さんが反応するほどだった。
けれど、起き上がるところまではいかず、そのまま力尽きる。

どうしたんだろうと思って見ていると、背中をかこうとする仕草。
もしかして痒いのかもしれない。

看護師さんが来て背中を確認すると、ひっかき傷があった。
やはり痒みがあったのだろう。
ワセリンを塗ってもらうと、母はまた静かに眠りについた。

私は相変わらず、朝4時に目が覚める。
YouTubeを見て時間を潰す日々。

最近見るのは、緩和ケアや人の死についての動画ばかり。
死というものは怖いものではなく、
人間の世界を卒業して元の場所へ帰るだけ――
そんな考え方の動画が多く、少しだけ気持ちが落ち着く。

呼吸も穏やかで、熱もなさそうだったので、
8時半に一度自宅へ戻ることにした。

これまでずっと病室に張り付いていたけれど、
私がいることで、スタッフの皆さんがやりにくいのではないかと
思うようになった。

一日を通して考えると、
朝はケアが集中する時間帯。
その時間は私がいない方がいいのかもしれない。

先生の往診もあるけれど、
大きな変化があれば連絡は来るだろう。

家に戻ると、久しぶりに温かいものが食べたくなった。
ソーセージの残りとほうれん草、市販のミートソースでパスタを作る。

久しぶりの温かいごはん。
冷凍ご飯もなくなっていたので、お米も炊いた。

コンビニのおにぎりにも少し飽きてきたので、
自分で握って、今日の夕食にしようと思う。

そのあと、お風呂に入り、洗濯機を回す。

ふと気づく。
生ごみを出していない。

うちは団地なので、ゴミ出しは夜だけ。
どうしようかと悩んで、事情を知っている在宅勤務の友人に頼むと、
快く引き受けてくれた。

彼女も一人でご両親の介護をしていた人。
だからこそ、一番気持ちを話しやすい。

本当に助かる。

彼女の休憩時間に合わせてゴミを持っていく。
なんだか少しだけ日常っぽい時間。

先週、親戚が来たときに買ったもみじ饅頭を
「おやつにどうぞ」と渡す。

15分ほど話して、また自宅に戻る。

帰宅すると、BSで映画『クイーン』が流れていた。
ダイアナ妃の事故死のときの、
エリザベス女王とブレア首相のやり取りが描かれている作品。

王室のことはさておき、
死を悼む人々の姿に、今の自分が重なった。
少し気が早いのかもしれないけれど。

15時、病院へ戻る。

ドアを開けると、母は起きていた。
「ただいま」と声をかけると、反応してくれる。

何か伝えたいのか、手を合わせて拝む仕草。
最近は言葉がうまく出ないぶん、
ジェスチャーで「ありがとう」を伝えてくれることが多い。

それを見た瞬間、また涙が止まらなくなる。
私は毎日、泣いてばかりいる。

看護師さんの話では、
今日はお風呂にも入れてもらい、
朝はメイバランスを数口飲めたとのこと。

やっぱり、私がいない方がうまくいくのかもしれない――
そんなことも思う。

テレビにも飽きて、
Amazonプライムミュージックで
ヒーリングやオルゴール、ハワイアンを流す。

母は、眠ったり起きたりを繰り返しながら、
静かに時間が流れていく。

その隣で、ただ一緒に過ごす。

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